住宅の工事現場には施主名・建築業者名・工事期間などが記載された立看板が設置されます。「業者名:住友林業」で施主名が男性と思しき氏名単独だったら、実際に住む実需のため建築する平均より高年収世帯の家、施主名が女性と思しき氏名単独だったら投資物件(賃貸住宅)、夫婦連名だったら平均並の世帯の家と予想できます。

かつて、適正な住宅ローン借入額は世帯年収の25%、上限いっぱいでも35%といわれました。しかし、年々、社会保険料が上がり、手取りが減っているため、世帯年収の20%台前半以下が妥当でしょう。

さて、世帯年収は、一般的に有職男性(夫)のみか、有職男性(夫)と有職女性(妻)の合計です。妻が非正規雇用の場合、夫だけで支払える金額で住宅ローン借入額を決めたほうが安心です。

ハウスメーカーのモデルルームを訪れた際、何度も「働いていらっしゃいますか?」と質問されました。フルタイムで働いていなければ家を買うなんて贅沢を思いつかないよ、と切れかけましたが、無視して話を進めました。今のディーラーは学生時代から知っていて、私が仕事をしているとわかっているから安心です。

生涯働く気のある女性だけが持ち家購入を希望する資格がある

女性であっても男性同様、生涯働き続けたいと考えています。「転職」は考えても「退職」は考えない。これまでのキャリア、経験によって明確に考え方が分かれるのです。

注文住宅の立看板をみると、男性名の単独表記が多く、まだキャリア志向の女性は少ないのだと残念な気持ちです。世の中に高年収男性は多いと妬ましくなります。タワーマンションは、逆に夫婦ともフルタイム勤務のパワーカップルばかり購入しているようです。選んだ住まいから世帯年収と妻の考え方がわかります。

ほぼフルローンの住宅ローン返済比率の目安

頭金として自己資金で多く支払った現住居の住宅ローン(夫婦ペアローン)の返済比率は世帯年収の8%です。金利動向の変化を受け、諸費用など200〜300万円を除き、全て借り入れる新居の住宅ローン(夫婦ペアローン)の返済比率は世帯年収の15%です。もし、片方の単独ローンだったら現住居と同額の自己資金が必要となり、返済比率も24%程度にアップしてしまいます。

転職に失敗してブラック企業に勤めても確保できると思われる、夫婦あわせて世帯年収750万円の場合、予算(総額)の目安は、変動金利0.755%で計算して、戸建は5400万円、分譲マンションは4800万円です。分譲マンションは、毎月平均2〜3万円のランニングコスト(管理費・修繕積立金・駐車場代)が必要となるため、予算金額を600〜800万円下げたほうがいいです。駐車場2台無料、分譲地固有の月額料金不要の戸建なら増やせると考えたほうがいいかもしれません。

ともに一流大卒の夫婦なら、夫は年収600〜900万円、女性は年収400〜600万円、あわせて世帯年収1000〜1500万円のパワーカップルとなります。彼らはもともと地頭のいい、良い家庭に生まれた成績上位者。かつての日本は階級を超えた逆転が可能でしたが、だんだん難しくなってきたため、文化資本の差を含めた「生まれ」に由来する格差はどんどん拡大するでしょう。
過去記事: 住宅購入予算からわかる格差社会

同じ世帯年収であっても、将来離職するため、夫または妻単独ローンとするなら、戸建3000万円、分譲マンション2400万円まで大幅に下がります。今の相場では、両親からの援助なしでは、かつて一般的だった単独ローンでは中古物件しか購入できません。生涯、共働きを続けましょう。

ハウスメーカーへのお願い

大きな住宅展示場のモデルルームに来るような20〜40代の女性は全員有職者と想定し、もし無職の場合は就職してから再訪問してくださいとやんわりお断りするべきです。首都圏エリアでは、そこそこの仕様の注文住宅はどんな僻地でも総額3000万円以下では建築できません(31.5坪費用総額公開中)。そもそも土地だけで、徒歩10分以内だと30坪2200万〜4000万円。私鉄やJRの人気駅だともっと高いです。本来、持ち家購入は不動産投資の一種。どの街も都心へのアクセスや町並み、買い物環境が良くなれば、趣味の家づくりは資産形成になります。