金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(リンク)をはじめ、同様の調査によると、貯金ゼロの世帯が増えているといわれています。

こうした年収・資産に関する調査結果は「世帯の合計値」であり、小遣い制ではなく、夫婦そそれぞれ自由にお金を使う共働き世帯が増えた今、設問の設計自体が不適切だと考えます。社会の変化にあわせ、個人年収・個人資産をベースにするべきでしょう。

なお、国は「家計の個別化(個計化)」を受け、調査手法を見直そうとしています。従来は除外していた単身者の家計調査もすでに始めています。マイナンバーですべての口座を紐付け、自ら家計簿アプリやエクセル表に入力しなくても、公的機関運営のポータルサイト上で、一目で資産残高や納税額、将来の年金支給額などが確認できるようになり、さらに項目ごとに統計データが公開されれば、企業のマーケティング活動は大きく変わるはずです。

一言でいうと、知りたいですよね、他人の財布事情。

堅実倹約ライフの結果、30代前半で貯金は1000万円超に

両親が保険・投資嫌いで無知だった自分は、20代後半まで「節約・倹約」にしか興味がなく、任意自動車保険以外の保険に一切加入していなかったため、無駄に税金を支払っていました。その後、まずは純粋に保障を求めてガン保険、リスクヘッジとして掛け捨て型の定期死亡保険に加入し、そして、節税を目的に、生命保険料控除の枠から逆算して年間払込額を決め、ソニー生命の個人年金に加入しました。

2012年に、配偶者と折半(2分の1ずつの共有名義)で新築マンション購入後、いったんマイナスに転じた預金残高がプラスに転じた最近になって「投資」に興味を持ち始めました。

最初のハードル、貯金100万の壁は遠く、その後の1000万はさらに遠いです。しかし、最初に大台を突破した後、本当にこれほどの大金を所有しているのか疑問に思い、銀行の預金通帳の数字が信じられなくなりました。

その時、新築マンションの売り出しを知り、思い切って電話をかけ、「頭金はいくらあればいいのですか? 1000万くらいあれば大丈夫ですか? 私も夫もそれくらいありますが……」と言ったところ、驚いたような声で相手は「十分ですよ!」といい、その日のうちに自宅まで資料を届けてくれました。さらに、モデルルーム(MR)見学の予約時には、かなりしつこく、初日の初回を勧められました。

MRオープン2日目に見学し、当日、契約しました。物件価格に対し、その時点での不足額は400万円。実際には、住宅購入時には登記費用や火災保険料など諸費用がかかり、物件価格プラス1割が必要となりますが、資金面で何ら問題がないため、即決できました。あとで担当者にきいたところ、この物件の購入検討者は資金に余裕がある人が多く、驚いたそうです。

IT・スマホが後押し、今こそ貯金から投資へ

新築マンション入居から5年。生活資金を確保した上で、すでに夫婦とも全額繰上返済可能とはいえ、住宅ローン付帯の団体信用保険と住宅ローン控除のメリットを考えると、繰上返済しないほうがトクです。しかし、0.775%の変動金利とはいえ、「利子がもったいない」という思いにかられます。同時に、表面上は貯金1000万円に近づき、再び、貯金や節約・倹約がむなしく感じられるようになりました。実際、ここ2、3年は散財しています。

手持ち資金に余裕のある配偶者は、3年ほど前から株取引をはじめ、株主優待と配当を目的に多額の費用を投じています。投資金額が多すぎる、投資先が偏っていると不満をぶつけていますが、多めに住宅ローンを借り入れ、潤沢なキャッシュフローで余剰資金を運用する戦略は正しいです。それがセオリーだとわかっていても繰上返済したくなります。借金は気分の悪いものです。

けれども、リスクを負って起業したり、投資した人だけが成功すると気づきました。「何者かになりたい」ならば、若いうちにもっとさまざまなことに挑戦するべきだったと今ごろ気づいても遅い。夢を持ちつつ、流されるまま過ごしてしまった「何者」にもなれなかった人間は、せめて金銭面だけでも成功しないと承認欲求が満たされません。

30代前半までの貯金は、奨学金一括繰上げ返済による約10万円の還付金、クレジットカードの10万円分無料の当選を除き、節約・倹約によるもの。しかし、手数料の低いインターネット証券、銀行を含めた少額からの積み立て投資、AIアドバイザーなど、資産運用を始めやすい環境が整い始めたのは、ここ1、2年のこと。まだ遅くはない、投資にトライするベストなタイミングといえるでしょう。

iDeCoの加入対象者拡大、つみたてNISA制度の新設を機に、国は明確に「貯金から投資へ」と訴えています。リスクは取りつつも元本割れだけは絶対に回避するローリスク・ローリターン運用で、再び貯金1000万を目指したいと思います。